
■ 成果報酬方式の活用事例
大阪府の泉州地域は、昔からニットやタオルなど縫製業が盛んで、
多くの工場と職人の方々がおられますが、近年中国をはじめ海外から安価な商品が大量に輸入され、
地域産業としての衰退を招くと共に、職人の高齢化も進み、危機ともいえる状態でした。
そんな中にあって、「創房のむら」を数人のメンバーで立ち上げ、
救護と介護の両方に使えるベルト式の担架を開発した野村さんがおられます。
当初、メンバー内で試作まで完成され、商品として販売する準備をしていたところ、
地域の産業指導所からデザイン上の不備を指摘されたので、
大阪府産業デザインセンターの主催する無料デザイン相談会に参加されました。
その時、偶然担当していた(有)インターデザイン研究所の上田は、
数箇所のデザインアドバイスを行いましたが、それでは不十分と感じた野村氏が、
後日、直接インターデザインを訪問してデザインの実務を伴う改善案の依頼をされました。
この時の重要なポイントは、野村氏が開発・製造・販売計画に渡る全体像のイメージを持たれていた事で、
単なるデザイン処理に留まらない長いスパンの依頼であることが、デザイナーとの合意を可能にした要因でした。
しかし、資本も無く、職人仲間でスタートしていますので、
デザイン事務所の必要とする費用のあてがありません。
そこで上田との話し合いで、成果報酬方式 を採用して、
工場出荷額の数%をデザイン費に充て、この中でパンフレットの製作、ホームページの制作など、
製品デザイン終了後も継続的にデザインサポートすることで、契約することになりました。
まず救護用担架として必要なデザイン、例えば緊急時に手で持つベルトを間違えないようにするため、
各ベルトの色を、肩掛け、手持ち、救護者の固定の3色に変え、お尻の位置や、頭の方向に大きなマークを取り付けることなど、
デザイン処理を行いました。
また基本的な構造は、野村さんがすでに特許を収得されていましたので、
その商品名を、ベルト式タンカから 「ベルカ」 にしてはどうかと上田から提案して快諾を得られましたので、
商標登録を取るお手伝いをいたしました。
これらの改善や権利の取得により商品としての販売準備が出来ました。
そして、スタジオ撮影を行い、きれいなパンフレットも完成しました。
また野村氏は、ホームページの重要性も認識されていましたので、
上田の手で、発売前までには「創房のむら」のサイトを作り、ベルカを掲載いたしました。
こうして商品力をつけた「ベルカ」は、(財)大阪デザインセンターのグッドデザイン賞や、
(社)日本インダストリアルデザイナー協会から表彰されるなど、
社会的な評価も上がると共に、野村氏の積極的な展示会への参加やマスコミへの働きかけで、
テレビニュースや新聞、雑誌をはじめ行政の機関紙でも紹介され注目を集め始めました。
しかしながら、いざ販売を開始してみたものの業界では新規参入で知名度も低く
大手の販社では扱ってもらえず、地元の小さな販売店や介護施設からのスタ-トとなりましたが、
野村氏の熱心な取り組みと適切なデザインサポートによって徐々に販路も拡がり、
現在では全国規模の大手販売業者のカタログにも掲載されるまでになりました。
この救護・介護用ベルト式担架「ベルカ」の成功の秘訣は、
当初はデザインにまで投資が出来なかったことが幸いして、デザイン事務所と成果報酬方式で合意出来た事と、
継続的で息の長いデザインサポートが受けられたことによります。
開発者とデザイナーが協力して、ひとつのヒット商品を作り出した好例と言えます。
○大阪産業創造館 発行 『 b-platz press(ビープラッツ プレス) 』 89号(月間誌)
「デザインは力なり」の特集で取り上げられました。 直感的に使用方法が伝わる、一人で担げるベルト式担架として、
Before After形式で紹介されました。
この記事を見た新聞社からの取材や、販売代理店希望の申し込みなど、
さまざまな波及効果が生まれました。
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